ハウスワイフ2.0

最近発売されたこんな本を読みました。タイトルは「ハウスワイフ2.0」。
特に最近は公私に色々なイベントが重なり、その上毎日仕事が忙しくて家に帰ってからムスコを寝かしつけて気がつくともうこんな時間。。。って心身ともにへとへとに疲れきっている時には弱いです、こういう本に。ついつい手に取って隅々まで読んでしまいました。

(kindle版→)

この本の内容を要約すると、

アメリカでは、高学歴かつ高収入の仕事でキャリアを積んでいた女性が、未だに男性中心の企業社会への不信から出産等のイベントを機にきっぱり仕事を辞め自ら選んで専業主婦となるブームが起きている。彼女達は都会のオシャレなアパートから田舎の一軒家に移り住み、自宅の庭で有機野菜を育て鶏や豚を飼育し、食事は全て手作りし、子どもは学校には通わせずホームスクーリングで教育する。それは従来の専業主婦にしかなれなかった女性とは一線を画した新しい専業主婦のカタチ、ハウスワイフ2.0なのだ。。。

ここでのハウスワイフ2.0となるには以下の条件が必要であるようです。

  • 一流大学卒や、大学院卒など高学歴であること。
  • 以前は高収入の仕事でバリバリキャリアを積んでいたこと。
  • クビになるのでなく、自ら選んで企業社会でのキャリアを捨て、専業主婦となること。
  • 都会のアパートを引き払って田舎の一軒家で暮らし、農場で食材を育て、毎日の食事を手作りしてかなり自給自足に近い生活をすること。
  • 全力で田舎生活と家事を楽しむこと。
  • 子どもは保育園や学校には通わせず、ホームスクーリングで教育し育てること。
  • 車の所有をやめ、普段の移動手段は自転車であること。
  • 自分の田舎での手作り生活についてブログで世間に発信し、それをビジネスにつなげて起業し自宅で自分のペースで仕事すること。

(うわ、ハウスワイフ2.0へのハードル高すぎです。。。)

この本では時代のブームに乗ってアメリカで活躍し、ある種のセレブリティと化している様々なハウスワイフ2.0達の事例が紹介されています。
しかしながら、最後の方まで読み進めると、ここでは単にハウスワイフ2.0現象について諸手をあげて賛成しているのではなく、以下のような警鐘を鳴らすことで締めくくられています。簡単に要約すると、

1. 経済的自立を大切にしよう。

  • 自分でお金を稼ぐことをやめて家庭に収まるのはリスクの大きい賭けのようなもの。お金は誰かが稼いできてくれるようなものではないし、離婚や死別などで大抵の女性の人生の後半は独身に戻るのだ。それに女性は子育てが終わっても半世紀近く生きる。大勢のハウスワイフ2.0予備軍たちは、その後の人生の方が長いということをすっかり忘れている。

私がここで恐ろしいと思った話を引用すると、

「子どもは10代になれば親なんていらないという態度をとる。そのときに母親は仕事をしていなかったらキッチンにポツンと取り残されることになる。家事に勤しんでも誰からも見向きもされず、お金も稼げずに一人取り残されるのだ。」
「10代の子どもが、赤ちゃんの時にベビーフードやクッキーを作ってくれてありがとう、などど母親に感謝すると思ったら大間違い。そういうことは母親が勝手にやっていたとしか思わない。だから、『ママもいい加減に大人になって自分の人生は自分で責任を取りなよ』と言われるのを覚悟しなければならない。その時あなたはもう50代。それでもあと40年ぐらい生きていかねばならない。こんなはずじゃなかったと後悔しても、60近くになってわくわくしてやりがいがあって稼げる仕事につけるはずもない。」
(キツすぎます、エミリーさん(著者))

  • 在宅ビジネスは甘くない。今や多くのアメリカの女性が、(facebookではなく)主婦によって書かれたブログを情報源としている。しかしながらその主婦ブログに描かれた世界はあくまで自分のビジネスの宣伝のために作り上げられた魅せるための世界でしかない。それにブログで収益を得たり、ネットショップで手作り品を売って稼いでいるカリスマ主婦はほんの一握りである。

2. 内向き思考になって自己完結型になってはならない。

ハウスワイフ2.0に代表されるようなDIYマニアは自分で食べものを育て、買い物は農家の直売所で済ます。そして政府なんてどうでも良いといった態度をとる。
もちろん彼女達はもともと高学歴で非常に問題意識の高い人たちなので、世の中の変化はまず家庭から、という信念のもと自給自足に近い生活を始めたわけだが、全ての変化が家庭の中だけで完結して終わってしまっているのはもったいない。
それに、女性が外で働くのを諦めてしまったら会社は今とは何も変わらず職場での女性の発言権もなくなってしまう。私たちは職場に踏みとどまって男性と同じ給料や適切な産休や人間らしい生活ができる勤務時間を手に入らなくてはならない。男性のために働くなんてばかばかしいと仕事をやめてしまったら会社も社会も改善されないままだ。
社会全体のことを考えながら家庭づくりに目を向けるのが大切だ。子育てだってホームスクーリングばかりではなく社会の一員として子育てした方が良いに決まっている。

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さて、私も毎日仕事と育児に追いまくられて都会での生活に疲れてしまった時、田舎でのゆったりとした生活に思いを馳せ、自分や夫の実家に帰ってのんびりして充電したいと思うことが多々あります。しかし、一定期間以上田舎にいると、(人間って自分勝手だなと思うのですが、) 今度はたまらなく東京の自宅に戻りたくなってきます。
また以前、私はアムステルダム郊外の絵画に出てくるような美しい田舎町で暮らしていたことがあったのですが、やはりずっと田舎で暮らしているとたまに息がつまりそうになり、アムステルダムユトレヒトなどの街へ出るとほっとしたような開放感に包まれたことをよく思い出します。
やはり「人生バランス」だなと思うのですよ。どんな環境にせよ、極端な環境に長くいると何事もひずみが出てきて人間疲れちゃうでしょ。
大都市でバリバリ働く女性にせよ、地方の専業主婦にせよ、人間どんな環境に置かれても、それぞれに応じた悩みや苦しみがあると思います。

そこで、さらにその先を行く新世代の主婦、ハウスワイフ3.0を提案します。それはどんな女性たちかというと、

  • いわゆる狭義の専業主婦ではなく、何かしらの仕事をもった主婦。
  • 自分の食い扶持ぐらいはなんとかなりそうな程度の収入があり、ワークライフバランスを保った働き方をしている。
  • 自宅と実家など、都市部と田舎の両方に行き来できる拠点があり、どちらの生活も定期的に楽しめる環境にある。
  • 一応食べ物と環境には気を使うが、たまにはファストフードも食べるし外食もする。
  • 保育園やベビーシッターサービス等の社会の力を借りてみんなで子育てする。

。。。え?それって今どきどこにでもいる普通の主婦じゃないかって?
いいんです。個人が自分や社会を健全に向上させるための第一歩はまず、自分が「普通であること」を認める勇気を持つことから始まります。
(余談ですがアドラー心理学によると、人間誰しも「自分は特別な人間である」と思いたい病にかかっていて、それが社会的に満たされなかった時、子どもは親や先生に注目してもらうために非行に走る。それが青少年の非行の原因だそうです。自分が「普通であること」を認めるのは人にとってものすごく勇気のいることなのだそうです。)
「普通であること」を認めた上、これが今の私にできる精一杯がんばった結果の生活だと自信をもち、社会へ参加し、さらなる生活環境の改善のため声をあげていく、
それがこれからのメインストリームになるであろう、ハウスワイフ3.0の姿です。

それにしても、癒しのつもりで手に取った本だったけど、結局全然癒しにはならなかったなぁぁ。。。

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「女性の貧困 〜 追いつめられる母親たち」から思うこと。 - MBAママの育児休暇