「母娘クライシス」から思うこと。

今日のNHK 特報首都圏で取り上げられていた「母娘クライシス --- あなたの愛が重い」。
「あなたのためを思って」と娘の人生に過度に干渉する母親と、その存在を重く感じて苦悩する娘。こうした実の母と娘の間の葛藤は、心の病や家族断絶にまで発展するケースもあり、専業主婦から社会進出への過渡期を生きた母娘間の「今の時代ならではの問題」と多くのメディアに取り上げられているそうです。
http://www.nhk.or.jp/tokuho/program/index.html

さて、この問題を考える上で、よく教育系育児雑誌や、(自称)セレブママ向け女性誌などでよく見かけるありがちな子どものお受験相談がふと頭をよぎりました。
「私は短大卒で、夫はいわゆるMARCH卒、でも娘はどうしても某一流有名私立小学校に入れたいんです。」
。。。さて、この人はなんで娘を某有名私立小学校に入れたいのでしょうか?
自分が叶えられなかった夢、例えば娘にバリバリ社会で活躍するキャリア女子になって裕福な生活をしてほしいから? それとも立派な教育を受けさせて裕福な結婚相手を見つけてほしいから?
いずれにせよ、自分が叶えられなかった理想の生活を娘に託しているだけに過ぎないように思います。勝手な理想を押し付けられて娘もありがた迷惑でしょう。
そもそも、(全てとは言いませんが、)これが上記の母娘間の断絶の原因の一つであるように思います。

そしてこの類いの母親にとって、最も見落としがちで、かつ非常に重要なことがあります。それは、
「自分の子どもは、自分の遺伝子を色濃く受け継いでいる」ということです。
そう、自分の遺伝子を受け継いでいるのですから、所詮、子どもは大きく自分をover performすることは殆どありません。あなたの子ですから、基本あなたレベルなのです。過度な期待をすること自体が理に合わないことなのです。
まず、その純然たる事実を受け入れた上で、過度な期待や干渉をすることなく、寛容に見守り育てていけばいいのだと思います。

また、子どものささいな才能を見逃すまいと24時間x1週間、子どもを習い事漬けにして自身の自己顕示欲を満たそうと企む母親たち。
こういった状況の子どもへの弊害について、以下、企業勤めを経た後、現在保育士としてバリバリ活躍されている友人Yの話を転載します。

習い事漬け、自由遊びの少ない園(製作、ドリルばかり)では、子どもが遊びに打ち込める環境に無い。子どもが唯一主体的な行動を取れるのは遊びである。遊びこめる力は、目先の華やかな体操教室、英語教室、音楽教室からは得られない子どもの成長また集中力の源になる。子どもの何も無い所からの創造・想像力はたいした物である。5年間の子どもが培った知識は大人からしたらたいした物ではないだろうけど、その5年間の中での彼らの知恵を認めてあげること。彼らの知識を生かして遊ぶ事だって大事なことだ。

子どもを習い事漬けにして自分の自己顕示欲を満たそうとする前に、重要なのはまず、この子は自分の遺伝子を受け継いだ子どもであるという事実を受け止めることからスタートすべきではないでしょうか?
(↑これ最も見落としがちだけど最も重要。)
所詮、自分の子なのだから。この事実を認めることで過度な期待で子どもの将来を歪めてしまうことなく、もっと肩の力を抜いて寛容な気持ちで育児に取り組めるのではないでしょうか?

話はちょっと飛びますが、ことばの連想ついでに一言いわせてください。
最近よくアベノミクス/ウーマノミクスで世間を騒がせた「3歳児神話」。子どもは3歳になるまで母親の手元で育てられなければならない、といった昔の都市伝説です。
さて、胸に手を当てて思い出してみてください。私もそうしてみます。
私は3歳まで母親の手元で大事に育てられました。そして今の自分があります。私は私以上でも以下でも何でもありません。特にすごいとかいうこともありません。
さて、あなたはどうでしょうか?3歳まで親の手元で育てられた結果、今のあなたがいます。保育園に通っていたならその結果、今のあなたがいます。別にあなた以上でも以下でも何でもありません。
極端な例ですが、かの有名なSteve Jobsは極端に言えばもと捨て子です。でも世界を変えてしまうほどすごい人になりました。
何が言いたいかっていうと、3歳まで保育園に行こうが親元にいようが所詮、結果論でしかないということです。育児に成功したなんてのは所詮子どもが20歳になるまでなんとも言えないんですから、育児はもっと長い目で見る必要があると思います。

ちょっと話が飛びましたが、冒頭に戻すと、自分の子どもだという事実を棚に上げて、子どもに過度に期待し干渉した結果、冒頭の母娘問題が勃発するのでは?と思うわけです。
私も、この子は自分の遺伝子を受け継いだ子どもであるという事実を受け止めることからスタートし、寛容に見守りながら個性を育てていきたいと思います。
(まあ、正直毎日もう慌ただしくて忙しいんで過度に干渉してるヒマもないだけなんですが。)

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