こどもと恋する美術館

ルーブル美術館展へ行ってきました。

そもそもこの企画展に行ってみようと思うようになったきっかけは、先日芝公園にあるオランダ大使館で行われた、フェルメール研究の日本における第一人者、小林頼子先生の講演とレセプションに参加し、今回の企画展の看板作品の一つがフェルメールの「天文学者」であると知り、また、先生とのお話から、高校生から20代終わりにかけてヨーロッパの中世から後期ルネサンスにかけての美術品の世界観にどっぷりとはまり込んで熱中していた自分を思い出しノスタルジーに浸る機会があったからです。

さて昨年より、オランダの学校を卒業したご縁でオランダ学術機関卒業生ネットワークの一員に加えていただいたお陰で、よくオランダ大使館でのパーティやイベントに参加しています。そのオランダ大使館で公開されていた一部のお部屋ですが、こんな感じ。

まるでELLE DECOの世界そのまま、北欧+ダッチデザインファンにはもうたまらないインテリアセンスです。今後もこんなステキなセンスから得られるinspirationを楽しみにしています。

さて、ここからが本日の本題なのですが、私は絵画好きということもありまた様々な展覧会の機会も多い東京に住んでいることもあり、今まで実に多くの美術館のいわゆる「企画展」に行ってきました。そして気づいたのですが、そういった企画展に行って強く印象に残った絵画が実はあまりない。入った瞬間黒山の人だかりを見るともう逃げ出したくなります。
特に東京では人口も多いため、少しでも名のある美術館の名を冠した企画展(例:ルーブル美術館展など)には人々が殺到し休日には超黒山の人だかりで、平日昼間でさえも(少しはましですが)やはり黒山の人だかりでゆっくり絵画鑑賞をさせてくれるという雰囲気ではありません。また、私の経験から、例えば「ミケランジェロ展」= ミケランジェロの作品1枚+その他ミケランジェロの同時代の仲間達の作品99枚、といったように、「ミケランジェロ展」と銘打っていても実際には「ミケランジェロとその仲間達展」といった、ほとんどが目玉絵画1枚プラスその何十倍もの抱き合わせ貸し出しの絵画で構成されています。また、企画展は多くが美術館のいわゆるイベントスペース的なテンポラリの場所(部屋)で行われるため個性を打ち出しにくく印象に残りづらい展示方法になりがちです。ようするに(コストの割には)つまらんものが多いのです。(もちろんいいものもありますが。)
しかし、東京の主要美術館では、その美術館独自の常設展ではなく、こういった海外の有名美術館を打ち出した企画展で鑑賞客集めを行っているのが現状です。

大学時代から社会人、そして留学中にかけて、何かと機会があればヨーロッパの美術館を訪れてきたのですが、その中で私が一番好きなのは、フィレンツェウフィツィ美術館です。その次に好きなのは、ローマのバチカン美術館、ベルギー/ブリュージュメムリンク美術館、バルセロナカタルーニャ美術館です。(ウフィツィやバチカンのように、私の大好きなルネサンスの巨匠たちの世界宝級の作品をたくさん所蔵しているものもありますが、)なぜ好きか?それはどんな目玉作品がどれだけあるかということよりも、むしろその美術館の中に流れる独特の時間のにおい、黄昏の似合うノスタルジックな雰囲気、柔らかく広がる光など、その美術館独特の空間、空気そのものが好きで、ここでずっと過ごしていたいと思わずにはいられない何かを感じるからです。ヨーロッパにはそういった美術館がたくさんありました。

一方、企画展頼みの東京の美術館にはそういったところは少ないように思います。しかしながら、10年ほど前、美術好きが高じて通った武蔵野美術大学のArt Management(美術館経営論)のコースの授業で、東京都心部のほぼ全ての美術館を視察し評価する、というフィールドワークを行った際に、東京にも「美術館そのものの存在や雰囲気」で勝負できる美術館があるじゃない、と感動したことがあったのをふと思い出しました。以下はその後も何度か足を運んでいます。

東京国立博物館 - トーハク
東洋美術がメインに集められた、とにかく巨大な美術館です。常設コレクションは圧巻ですし、静寂に包まれた中で思い思いの仏像との対話が楽しめます。独特の凛とした雰囲気が漂う、まさしく「美術館そのものの雰囲気」を感じられる場所です。(広いので多少子供がぐずっても大丈夫でしょう。) 私はやはりいろんな意味でここが日本一の美術館だと思います。(美大の先生の受け売りです。)
同じ上野公園内にある、国立科学博物館と合わせて、息子と一緒にぜひとも通いたい場所です。
国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo

日本民藝館について|日本民藝館
駒場公園近くにある、国内外の民芸品を集めた小さな美術館です。室内の美しい和風のインテリアもさることながら、何と言っても美術館の中に流れる独特の時間のにおい、ノスタルジックな雰囲気、柔らかく広がる光など、独特の空間、空気そのものを感じられる場所です。
私が初めてここを訪れたのは、10年前、プロダクトデザイナー柳宗理さんが館長を務めておられた時でした。「毎朝早起きして全部の戸を全開にして空気の入れ替えをしているんですよ。」とおっしゃっていた姿を今でも思い出します。今はなんとデザイナーの深澤直人さんが館長をされているんですね。

ブリヂストン美術館
ザ都会の美術館って感じです。上記2つのような箱ものそれ自体が強い個性を出しているという訳ではないのですが、とにかく小学校と中学校の美術の教科書に出てくるような分かりやすい西洋絵画が一堂に会している点で子供にやさしく素晴らしい常設コレクションを持っている美術館だと思います。ぜひぜひ息子と来て盛り上がりたいと思います。

大人の事情で子供を美術館に連れて行こうとすると、ついつい美術館=企画展になってしまいがちですが、そうすると、子供にとっては、美術館=企画展=没個性の部屋での黒山の人だかりの印象=苦痛でつまらない、といった図式ができてしまうのではないかと思います。それは本当にもったいないし残念なこと。情操教育の一環として、一応何にでも興味を示す幼児期のうちに、本当に質の良い美術館で、美術館そのものの雰囲気、心地よさを一緒に味わうということをぜひ息子としておきたいと思っています。(小学校にあがったら美術館なんてつまんないとか言いそうですからね。)

さて、以下は先述のフェルメール研究家、小林先生の著書です。フェルメール好きにはたまらないかも。ルーブル美術館展に行かれる予定の方も予習しておくとさらに楽しめるかもしれません。

さて、ここまでアートなことを書いておいてなんですが、本日の夫の息子への絵本のおみやげは。。。

うんちにまつわる衝撃のストーリー。いろんな意味で質の高い本です。息子のトイレトレーニングの助けになればと。。。