医療格差

今日は、母の3回目の東京の病院での診察でした。経過は良さそうで安心しました。

母が脳梗塞を起こして地元の病院に入院したのは昨年8月半ばのことでした。一時的に手足が不自由になり、それから数回の検査と約2ヶ月間のリハビリを経て回復し現在では普通に生活しています。

脳梗塞を起こしてから約1ヶ月後の9月半ば、症状が落ち着くのを待って行った検査で、母は当時の入院先であった地元の病院の脳外科の先生からとある難病の確定診断を受けました。そして緊急性を要するということでその場で強く手術を勧められました。そして手術を受ける際のリスクについて詳細に説明(半ば脅し)を受けました。私たち家族全員でその場で先生の説明を聞いていましたが、現在の症状は落ち着いているのに、なぜそんなにすぐ手術しなくてはならないほどの緊急性があるのか(しかも脳外科手術)どうしても腑に落ちませんでした。そして、年齢的なものもあるので、手術をせずにこの先つき合っていくことができる病気ではないのかとの質問をしたところ、「それはない。年齢を考えても絶対にすぐ手術すべきだ。」と言われました。そして、先生に、その手術件数と手術実績(要するに何人殺してきたか?)を聞いたところ、彼はムッとして、ほとんどない(が何か?)、(何件とは言えないが)またその病院が属する大阪圏の病院全体でもかなり少ない(が何か?)と答えました。弟が医療関係者なので、脳外科分野で有名なとある東京の病院の名前をあげ、そこでの診察も考えているがどうか?と伝えたところ、その先生はさらに怒って「手術件数や手術実績を東京の病院と比べられたらそれはもうかなわないに決まっている。そもそも症例自体少ないんだから。」と言いました。そして「その東京の病院に行って見てもらうのもいいが、なるべく早く手術してもらうべきだ、症状も落ち着いているのでもうここで手術しないのならすぐに退院してくれ。」と言いました。

退院後、母は地元の自宅近くのリハビリ専門病院に転院し、そこでさらに1ヶ月のリハビリ入院後、通常の生活ができるようになったため退院しました。そしてそれから4ヶ月後の今年2月半ば、その病院の先生から、脳梗塞を起こしてから半年経っているからそろそろ先生の経過を見てもらった方が良いのではないかというアドバイスを受け、母は東京のとある大病院の脳外科に診察を受けにやってきました。そこには脳外科のその難病治療における日本の権威の先生がいるからです。そして私たち家族全員が集結し、先生の診察を聞きました。1回目: 診察、2回目: 検査&診察、3回目: 診察、と今日まで計3回、母は父と東京のその病院を訪れ、診察時は必ず家族全員で同席しました。そして、結論は、「血管が自然回復しており、現在のところは問題ない。手術は必要ない。」とのことでした。またその権威の先生がおっしゃるには、母の症例は、まあ、今までその難病を煩うたくさんの患者さんを見てきたところ、典型的なその難病パターンでもない。(一応難病っちゃあまあそうかもしれないけどかなり微妙なライン。)先生自身、54歳以上の手術は行ったことがなく(というかそれ以上の年齢になると手術のメリットよりリスクのが圧倒的に高いのでやらない。)、他を見てもそれ以上の年齢の患者に対する手術成績が悪い。(要するに命の危険がある。) 要するに今は自然回復しているし年齢を考えると、ベストなのは手術するのではなく、日常生活に気をつけて上手にその病気とつき合ってください、ということでした。
そして、経過観察として次は6ヶ月後に検査&診察に来てくださいと言われました。

もしあのまま地元の病院であのキレ気味の先生に言われるがまま脳手術をしていたら、と思うと恐ろしくなります。人口が少ないため症例も手術実績も少ない地方の病院と、圧倒的に症例も情報も手術実績も豊富な東京の病院。そこには圧倒的な情報格差、医療格差があり、それが時には人の寿命を左右するのです。
もし、先生から手術を勧められたら、必ずその先生の手術件数、手術実績(要するに何人殺してきたか?)、セカンドオピニオンの必要性を確認する必要があります。
先生はキレるかもしれません。でも、患者さんが、先生を怒らせないように遠慮して聞きたいことも聞けずよく納得もできないまま手術をしてしまったために取り返しのつかないことになったら?先生は神様ではありません、ごくごく普通の人間です。キレるし怒るし失敗もするしヤブも普通にいる。今回の件で、田舎の病院で(まあ田舎であるかないかに関わらずですが)、先生の言うことを鵜呑みにしてしまうことの危険性を本当に感じました。情報弱者、医療弱者にならないためにも、確認すべきことはきちんと確認した上で決断しなくてはならない、そう思うのでした。

本当に良かった。そして自然回復してしまう母の強さにはもう本当に驚かされたのでした!(でも無理はしないでね。)

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