疑問だらけのキャリア教育

一度寝返りに成功したムスコが日に日に活発になり、床に転がしておくと何度も何度も寝返り開始ポーズをとります。(そしてひっくり返る途中で頭が重くてどうにもならなくなった時はそのままの体制で泣いています。)これからどんどん活発になり、何にも抑えられない彼自身の個性そのままが花開いていくことでしょう。本当に楽しみです。

大卒者の5人に1人が(非正規の)不安定な雇用形態の仕事についている、これは大問題だ、とつい数日前にいろいろなメディアが大きく報道していました。
この件に対応するために教育機関がキャリア教育を改善しなくてはならない、という締めくくりが大抵の大手メディアの論調でしたが、(個人的には何でこんな記事が各メディアのトップを飾る必要があったのか理解に苦しみますが)
この記事に関する私の疑問は、

1.そもそも正規雇用されなきゃ人生終わりなの?
2.雇用側(日本企業側)の姿勢に問題があるんじゃないの?

1.そもそも正規雇用されなきゃ人生終わりなの?
政府やメディアは大学などの教育機関正規雇用の就職率を上げるようなキャリア教育が必要っていってますけど、そもそも大学って正社員になるための予備校でしたっけ?高等教育機関には、これからますますグローバル化する社会で自立して何があっても生き抜ける基礎体力とか筋力みたいなものを鍛えていただきたいのであって、あまりそういった正規雇用になることを目的とした就職予備校みたいなところには自分の子供を行かせたくないなぁ。
また、日本の大企業もずいぶん前から行き詰っていて、政府が国を支える新たな産業と雇用の創出のため個人の起業の奨励を行うといっていますが、実際は日本で起業するには規制がありすぎたり社会から支援が得ずらかったりして政策がうまく機能しているとは思えませんし、起業の奨励とか言っておきながら若者には正規雇用になれないと人生終わり?みたいに煽っているのは理解に苦しみます。
実際には起業して新しい価値を創出している人や、フリーとして自らの手腕でプロジェクトを渡り歩き高い収入を得ている人もいる一方、正社員だからといっていったん解雇されれば何をしていいか分からなくなる人もたくさんいることでしょう。
もしも社会が本気で若者の雇用情勢を何とかしたいと思っているのなら、正社員になれなければ人生終わり、というような扇動や雇用の硬直化をやめて、何かしらのそれぞれにあった方法でちょこっと稼ぎながらでも生きていけるような柔軟な社会を目指してくれたほうがそれなりに面白みや夢があって子どものためになりますよ。

2.雇用側(日本企業側)の姿勢に問題があるんじゃないの?
以前に就職活動したり、日本の会社で働いたり得意先として付き合ったりした時があったのですが、その頃から今まで変わってないなーと思うのは、雇用する側の日本企業のポリシーです。

主要な日本企業の雇用ポリシー

  • 新卒一括採用を原則としている。たまに中途採用を行っても昇進や仕事内容を制限する。
  • 新卒(または第二新卒)であるかを非常に気にする。
  • 採用時の年齢を非常に気にする。
  • 性別を非常に気にする。
  • 転職回数を非常に気にする。
  • 一流大卒かどうかを気にする。
  • アルバイトや派遣社員で入ってしまうとまず正社員登用の道がない。
  • 一回でも正規雇用の道を外れると正規雇用にはまず戻れない。
  • スペシャリスト採用の概念が薄く、非正規雇用を単なるコスト安の労働力と位置づけている。

ごくまれな例外はあるとしても、そうそうたる日本の大企業がそろってこういう雇用ポリシーを掲げていたらいつまでたっても雇用は流動化するどころか硬直化するばかり。この姿勢を変えない限り雇用のパイは広がらないし、この上、年功序列や非効率な長時間労働や安給料なんかが加わったりしたら優秀な人は間違いなく他に行っちゃいそうですね。
それに、キャリア採用が原則のアメリカなどでは新卒でいきなりどこかの会社の正社員になる例は少なくて、大抵の大学生が卒業後にアルバイト的な身分でいろいろな職場を転々として職歴を積んだあとに会社に正規雇用されるパターンが多いのですが、これに比べると日本の大学生の就職市場って本当に硬直化していて面白みがないし、ビジネス面からも非効率な気がします。
今、そうそうたる日本の名門企業がリストラに明け暮れてますが、そもそもの雇用ポリシーを変えて人材に対して柔軟にならないといくらリストラしてもあまり変わらないんじゃないかと思います。

できれば日本企業で働いて日本をよりよくしたい、っていう思いを持った優秀な人は世の中たくさんいると思いますが、上記の日本企業固有の雇用ポリシーのため、そこで働きたくても叶わない人って結構いるんじゃないでしょうか。せっかく意欲のある優秀な人材がいるのに門前払いして才能を生かせないなんて本当にもったいない。

昔から、日本って外からの圧力がないとなかなか変わろうとしないって言われてますけど、それこそ、日本をいい方向に変えたいなと思う優秀な人は、起業したり、新興企業や外資系企業に行って頑張って良いサービスや商品を次々繰り出して、従来の日本企業や役所に脅威を与える(=外圧)ことで日本をよりよく変えていくしか道がなくなっちゃいますよね。

小さい子供を持つ親としては、あまり硬直化した夢も柔軟さもないような社会や教育機関で自分の子供の教育を受けさせるのは息苦しさで個性をつぶしてしまいそうでなんか面白くない気がするのですよ。