母乳にまつわるエトセトラ その2

その1からの続きです。

母乳育児が軌道に乗りしばらくした産後2か月頃から、病院で受けていた「母乳教」とも思われる徹底した完全母乳育児指導に多少なりとも疑問を感じるようになりました。

入院中だった産後5日頃、ムスコの体重が増えていないことと母乳の出が思わしくなかったことで焦りを感じ、助産師に相談して母乳の他にミルクを1日20cc程度飲ませることにしました。
あくまでムスコの体重を維持し増やす事を目的とした暫定措置で、泣きわめくムスコを連れて夜な夜な午前3時頃にナースステーションへミルクをもらいに行く事が何か悪いことをしているようなバツの悪さを今でも覚えています。
退院後も、産後検診までの6週間の間、同じ病院の母乳外来に週1ペースで通い続け、胸のマッサージや授乳指導を受けていましたが、この間も母乳の出に自信が持てなかった日は1日にミルクを80cc程度足していました。それを助産師に話すと、体重の増加は十分すぎるぐらいだから、ミルクをもう足す必要はないということを繰り返し言われました。

現在の粉ミルクは母乳栄養に近い成分で作られていて非常に栄養価が高く高機能なものです。
ですが、入院中からこの間に、私の中で、まるでミルクが毒であるかのようなイメージが出来上がり、ミルクをあげる事に多少なりとも罪悪感を覚えるようになり、
熱中症や脱水症状が心配な就寝前や新幹線や車での長距離移動前など、やむを得ずミルクを飲ませる時も根拠もなく量を少なめ少なめにしようとしていました。

そういったミルクに関するもやもやを晴らすきっかけとなったのが、近所でも評判のいいある個人開業の産婦人科に別件の検査で訪れた時でした。
60代ぐらいの先生が出てきて、こう言いました。
「母乳は免疫物質が含まれる産後1か月間だけ与えれば良い。あとはミルクで全くもって問題ないし、スキンシップは母乳でなくても抱いてやれば十分だ。産後3か月ならもう離乳食を始めるべきだし、母乳しか与えていないのであれば、お母さんは子供から離れられずどこにも行けなくなってしまうじゃないか。最近はだいたい助産師が余計な事を言い過ぎる。」

医療業界には強烈な母乳論者もいれば、そうでない論者もいる。
これはある意味私が、今後の母乳育児を考える上でよいきっかけとなりました。私自身の考えを以下にまとめると、

  • 母乳のメリット

→お母さんの免疫物質を赤ちゃんに渡す事ができる、スキンシップ、ダイエットなどなど一般的に言われている数多くのメリットがあり過ぎるのでここでは深く触れません。

  • 母乳のデメリット

1. お母さんの栄養状態が良くない場合、赤ちゃんの栄養状態にも影響が出る。
2. お母さんの病気が赤ちゃんに母乳を通して伝染する場合がある。
3. お母さんが子供から離れられなくなり、気分転換などがうまくできずにストレスがたまる。
4. お母さんの母乳が出なくなった場合、赤ちゃんが栄養を摂取できなくなる。

1. お母さんの栄養状態が良くない場合、赤ちゃんの栄養状態にも影響が出る。
ここで典型的な例を一つあげると、
入院時から病院側では赤ちゃんにビタミンKを投与し、退院後も週1回で計11回、ビタミンKを含んだシロップを赤ちゃんに飲ませていました。ビタミンKが不足することで、赤ちゃんがまれに頭蓋骨内出血を起こす場合があるからです。これは母乳栄養の赤ちゃんにのみ起こる可能性があり、完全母乳のお母さんはこのビタミンKを含む食品を毎日摂取するなど栄養状態に気をつける必要があります。つまり、お母さんの栄養状態が偏っていると、母乳を通じてそのまま赤ちゃんの栄養上状態も偏ってしまうのです。

2. お母さんの病気が赤ちゃんに母乳を通して伝染する場合がある。
全部ではありませんが、お母さんが感染していた病気が母乳を通して赤ちゃんに感染してしまうこともあるようです。

3. お母さんが子供から離れられなくなり、気分転換などがうまくできずにストレスがたまる。
私の母は、完全母乳で子供3人を育てたのですが、赤ちゃんだった私は哺乳瓶を拒否したため大変苦労したそうです。私に、「ムスコちゃんは親孝行よ。母乳もミルクもどちらも飲んでくれるんだから。」とよく言います。
確かにお母さんが少しの間でも赤ちゃんから離れて気分転換ができた方がストレスがたまらずに精神衛生上よろしいと思いますし、リフレッシュできた方がさらに母乳の出も良くなります。また、いざ急用で誰かに赤ちゃんを預けなければならなくなった時、赤ちゃんが母乳しか飲めないと大変なことになります。
好き嫌いなどの自我が出てくる2ヶ月ぐらいになると哺乳瓶を拒否する赤ちゃんが出てくると渋谷区の助産師さんから聞きました。生後まもなくのまだ訳の分からないうちに哺乳瓶に慣れさせておくといいのかもしれません。

4. お母さんの母乳が出なくなった場合、赤ちゃんが栄養を摂取できなくなる。
母乳は単純な理由でいとも簡単に出なくなります。病院や区の助産師さんから聞いたところ、原因としては、
「母乳がつまる」、赤ちゃんの吸い癖やいつも同じ抱き方で同じ場所ばかり吸われ続けているといった原因で、吸われていない乳管が母乳で詰まり白班ができて、その乳管からは母乳が出なくなります。これが進行すると発熱を伴った炎症を起こしたりします。授乳間隔が空きすぎたりしても起こる事があるようです。
「母乳が出ない」、白い血液とも呼ばれるように母乳は血液からできているため、冷えや浮腫、運動不足、ストレス、病気などで食事ができないなどの原因でお母さんの血液循環が悪くなると出なくなります。
私も現在までの3ヶ月の間、赤ちゃんの吸い癖が原因で3回ほどおっぱいに白班ができ、母乳外来で助産師さんにマッサージで除去してもらったり(死ぬほど痛かった。)、授乳間隔が空き過ぎたために詰まって自分でお風呂で涙目になってマッサージして開通させたことがあります。幸い完全に母乳が出なくなる、といったことはありませんでしたが、母乳って簡単に詰まるんだなぁと。
お母さんの母乳が出なくなった時、赤ちゃんが大変なことにならないためにも、リスクヘッジとして早いうちから哺乳瓶とミルクの味に慣れ親しんでしまわせることも手ではないかと思います。

以上を踏まえて私が出した結論は、
基本は母乳メインだが、夜間などはミルクの力も借りる。
母乳のデメリットをミルクで補えていいとこどりじゃないですか。むやみに完全母乳にこだわる意味が分からなくなってきました。

今の世の中、専門家であるないに関わらずいろいろな理論や見解があっていろんなことを言う人がいます。いろんな人の意見を聞いてみたり調べたりして総合的に自分がいいと思った方法を選ぶのがある意味正解なのであり、最大のリスクヘッジなんだと思います。

余談ですが、母乳育児のメリットの一つとしてよくあげられるダイエットですが、私はそれ、あまり信用してません。
私は出産直前まで、浮腫がひどくて妊娠前体重より21kg増えてしまい、産後1週間でそこから一気に18kg(!!!)減り、結果として妊娠前体重プラス3kgで落ち着いたのですが、
毎日母乳をあげ続けているにも関わらず、現在まで依然としてプラス3kgでこれより減ってはいません。(増えてもいませんが。)
人間の母乳に含まれる脂肪分の比率が3.5%であることを考えると、一日1000cc母乳をあげていると仮定しても35gの脂肪分/日の減少にしかなりません。こんなのスタバのラテで間違いなく帳消しになりますよね。アザラシみたいに母乳の脂肪分が40%とかなら分かりますが。
ちなみに毎日水分は母乳になって取られ続けるので、便秘になることは間違いないです。

それではー。