母乳にまつわるエトセトラ その1

赤ちゃんが産まれた直後から自動的に母乳がドバドバ出て特別な事をしなくたって自分の母乳のみで問題なく赤ちゃんを育てられる、
出産前はそれが当然のように起こる事だと思っていました。

私は4月下旬に東京都内のある病院で出産しました。
都心の大使館や外資系企業が入ったビルが立ち並ぶ地域にあり、外国人の妊産婦も多く通院するような先進的で、
WHOの母乳育児ガイドラインに基づく徹底した完全母乳育児指導を行う事で有名な病院でした。そして私自身もその「母乳教」とも思われるポリシーに何の疑問も抱かなかったし、当然自分も何の問題もなく完全母乳育児ができるものだと思っていました。

可愛いムスコをこの手に抱く事が出来て感謝感激雨あられであった一方、出産入院中は私にとって本当に苦しい時間でした。
出産直後は、母乳が数滴しか出ず、その後数日はやはりチョロチョロとしか出ず、お腹をすかせて泣き叫ぶムスコを満足させてあげることができませんでした。

  • 出産直後

私: 絞りだしても母乳が数滴しか出ない。でもムスコに必死で乳首を舐めさせようと四苦八苦。
ムスコ: 赤ちゃんは産後3日間分の「弁当と水筒」を持って産まれてくるためお腹もすかず、乳首を吸おうとしない。やる気もなくすぐ寝てしまう。

  • 産後4日

私: ムスコの体重が増えていないと助産師さんから注意を受け、かなり焦る。でも母乳はチョロチョロと流れる程度しか出ない。
ムスコ: お腹がすいてきたことを自覚し始めたが、乳首がうまく吸えず、たまに吸えても母乳の量に満足できず一日中泣きわめいているかおっぱいにぶら下がっている。

  • 産後7日

私: 助産師さんの懸命な授乳指導やマッサージ等により、母乳の分泌量が一気に増加し、ドバドバとはいかないもののピューピューと吹き出し始めた。
ムスコ: 乳首を吸う事に慣れてきたが、新生児のため一度に多くの量を吸い取る哺乳力と、継続して吸い続ける体力がないため満腹感が得られず一日中泣きわめいているかおっぱいにぶら下がっている。

  • 産後1か月

私: 母乳の分泌量がさらに増え、1回の授乳で100cc程度以上出るようになった。(1回でどれだけ出てるのか知りたくて自分で搾乳してみました。)
ムスコ: 徐々に多くの量を一度に飲むことができるようになり満腹感を得られるようになってきたため、授乳間隔が3時間程度空くようになった。それでも授乳にかかる時間は1回あたり1時間程度。

  • 産後2か月

私: 母乳がドバドバ出るようになり、3時間以上授乳間隔が空くと母乳が漏れだしてくるようになった。
ムスコ: 多くの量を一度に飲む事で、夜は6時間程度連続して眠り、日中も3時間程度連続して昼寝するようになった。授乳にかかる時間も短縮されてきた。

結局私の母乳育児が軌道に乗って来たのは、産後1か月以上経ってからでしたが、私のケースは非常に一般的なもので、初産婦で出産直後からドバドバと母乳が出るケースの方が稀なことであるようです。
妊娠後期にかかった妊娠高血圧症候群の経過観察のこともあり、私の出産入院は全部で10日間続きましたが、その間の睡眠時間はトータルでたったの3時間程度でした。入院中は昼夜問わず、助産師さんから授乳指導を受けているか、マッサージを受けているか、授乳しているかのどれかでした。
母乳も、乳管が開通した状態で、かつ最初は出ないながらも赤ちゃんに吸わせて刺激を与え続けて分泌ホルモンを出して初めて出るようになるそうです。夜中に病院内の授乳サロンで出会ったお母さん達もみな涙目でフラフラになりながら苦労していました。

ここで私が感じたのが、母乳育児が成立する条件は以下の3つで、

1. 母体の母乳分泌力
2. 新生児の哺乳力と吸い続ける体力
3. 新生児の食欲

これらの条件が全て満たされて初めて成立するということです。
つまり、単に母乳だけが最初からドバドバ出ても、赤ちゃんの哺乳力が弱ければ何の意味もなく、訓練して鍛えなければならないということです。

それぞれの成功確率を掛け合わせても、上記3つの条件が全て同時に揃う確率はかなり低いんじゃないかと思われます。
母乳育児はそれだけ努力と根性と苦労を伴うものなのです。
世の中に当たり前の事なんてそうそう存在するものじゃない、本当にそう思います。
どのお母さんもみな努力と苦労を重ねて今があるんですって。

その2に続きます。